『…好きでした、それからごめんね。』
「それで10年振りに会った俺は想像よりもイイ男になってる?
それとも見る影もなく変わり果てた?」
上杉君は意地悪な笑顔で私に聞いてくる。
「……喜ばせるような事言って欲しいの?」
笑って私も素直には答えない。
「上杉君こそ……酒飲みになった私を見てガッカリした?」
内心ドキドキしながらも軽い調子で聞いてみる。
「喜ばせる事言ってやる……吉野は想像以上に綺麗になったよ
見る影もなく変わり果ててたら……
今日2人だけで同窓会しようなんて声かけてない」
冗談めかした物言いはきっと照れ隠しに違いない。
綺麗になったと言って貰えた事が恥ずかしいのに
嬉しくてバカみたいに涙が零れた……
「吉野美紅さん……
10年前には叶わなかった恋を俺と始めませんか?」
上杉君は真剣な表情でそう言った。
私は小さく「……はい」と返事をするが精一杯だった。
「これでもう吉野は俺の彼女だからやっと呼べる。
『美紅』ってずっと呼びたかったんだ……
美紅は今日から俺のこと『拓斗』って呼べよ!」
上杉君改め拓斗君はそう言ってから私の頬を軽く両手で挟んで
唇の表面が微かに触れるだけの優しいキスをして微笑んだ……