【完結】ホイクメン!
まるで私の声に応えるかのように。


防波堤の方角から強い風が吹いてくる。




微かに聞こえたその声を、私は決して聞き逃しはしなかった。




―――『信明と准一の事、よろしくお願いします・・・―――』




風に吹かれて砂が舞い、私は一瞬目を閉じてしまった。


そしてその目を開けた時、もう陽は完全に水平線の下へと沈んでしまっていて・・・。




「あれ・・・?」




さっきよりも暗くなった海岸の風景。


それ以外変わった事はないはずなのに、さっきまで存在していたものが消えて無くなっている。




―――葵さん・・・、いなくなっちゃった・・・。




私に2人の大切な人を託し、彼女はようやく還るべき場所へと向かったのだろうか?




ぼんやりと佇んでいたはずの姿はもうそこにはない。


今あるのは、防波堤に積まれた古い消波ブロックの山だけ。
< 450 / 485 >

この作品をシェア

pagetop