我が家で毎日起きること
いーさんが、いつになく真剣な顔でやってきて。
「ママ…あ、いいや、今忙しいよね?何でもない」

これ、放っておけます?

私は、出来ないっす。

娘が思春期になってから、取り返しのつかないことになりそうで。

なので、ツムツム(携帯ゲーム。ディズニーキャラをひたすら消す生産性はないけど、はまるやつ)の手を止めて、いーさんと向き合ったんです。

「どうかした?」

「…ん、んーー…何でもない」

…これで何でもなかったら私がどんだけ妄想癖があるんだよ、って言う。

「言うのが辛いなら聞かないけど、ちょっと言いたいならいくらでも聞くよ」

「ん、んー」

…で、平静を装ってツムツム再開する私と、横でもじもじしてるいーさん。

不自然な時間が流れ、私は、頭の中でぐるぐる考える。



どうしたのかな。
友達と、喧嘩したとか?
テストで悪い点取っちゃったとかなら笑い飛ばしてあげよう。



…しばらくして、どうやら、覚悟を決めたらしいいーさんが、青白い顔で私を見て、小さい声で言った。

「あたし…」


どーしたどーした?


「牛乳、やっぱり好きじゃないかも」


…えーーーーーー???


散々もじもじしといてそれ?

つーかあなたが牛乳嫌いなのなんて、おかーさん9年前から知ってますけどね?

「あ、そー…んじゃ先生に苦手ですって言ってみたら?」

「言ってもいいのかな?」

「…いーんじゃない??」

「ハァァァァーーーー、よかった、ママに言ってみて!」

心底ほっとした顔でるんるんと立ち去るいーさん。

彼女の世界の中で一番深刻な悩みが『牛乳苦手』なんだとしたら、何て平和で素晴らしい人生なのかと、おかーさんは嬉しく思います。
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