天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
彼の瞳。見慣れた整った顔立ち。目の前でハッキリとその唇が近づいてくる。
真っ白な頭に血がのぼり、ドンッと心臓が暴れ、ドッと血圧と体温が上昇する。
どうすればいいの? ねぇ、どうすればいいの?
これは現実?
あ……あたし、これから生まれて初めてのキスを……。
……!
その時あたしの全身が恐怖で硬直する。
大量の冷水を全身に一気にぶちまけられたような気がして、夢から現実に返った。
体温!? 汗!?
……鉄仮面が!!
すぐそばの街灯があたし達を照らしているせいで、今まで薄暗がりでよく見えなかったものが見えるようになっている。
つまりあたしの……メイクの崩れた、この顔が!!
「嫌あぁっ!!!」
悲鳴を上げながら思い切り晃さんの顔を手で押し退けた。
彼がよろけて、腕があたしの体から離れる。
あたしは無我夢中で駆け出し、彼から必死で逃げ出した。
見られた! きっと見られてしまった!
あたしの汚く崩れた鉄仮面の下の素顔を、晃さんに見られてしまった!
「聡美さん! 待って!」
彼の声が追いかけてくる。
それはあたしにとって恐れ以外のなにものでもなかった。
逃げたい! 逃げたい! 一歩でも遠くへ逃げ去りたい!
晃さんに、この顔を見られなくても済む場所まで!!
道路沿いにタクシーのライトが近づいて来るのが見えて、あたしは夢中で手をあげた。
そして飛び込むようにシートに転がり込む。
「走って! 早く!」
叫びながら手で顔を覆い隠す。
視界の端に駆けてくる晃さんの姿が見えたけれど、タクシーが間一髪で走り出した。
真っ白な頭に血がのぼり、ドンッと心臓が暴れ、ドッと血圧と体温が上昇する。
どうすればいいの? ねぇ、どうすればいいの?
これは現実?
あ……あたし、これから生まれて初めてのキスを……。
……!
その時あたしの全身が恐怖で硬直する。
大量の冷水を全身に一気にぶちまけられたような気がして、夢から現実に返った。
体温!? 汗!?
……鉄仮面が!!
すぐそばの街灯があたし達を照らしているせいで、今まで薄暗がりでよく見えなかったものが見えるようになっている。
つまりあたしの……メイクの崩れた、この顔が!!
「嫌あぁっ!!!」
悲鳴を上げながら思い切り晃さんの顔を手で押し退けた。
彼がよろけて、腕があたしの体から離れる。
あたしは無我夢中で駆け出し、彼から必死で逃げ出した。
見られた! きっと見られてしまった!
あたしの汚く崩れた鉄仮面の下の素顔を、晃さんに見られてしまった!
「聡美さん! 待って!」
彼の声が追いかけてくる。
それはあたしにとって恐れ以外のなにものでもなかった。
逃げたい! 逃げたい! 一歩でも遠くへ逃げ去りたい!
晃さんに、この顔を見られなくても済む場所まで!!
道路沿いにタクシーのライトが近づいて来るのが見えて、あたしは夢中で手をあげた。
そして飛び込むようにシートに転がり込む。
「走って! 早く!」
叫びながら手で顔を覆い隠す。
視界の端に駆けてくる晃さんの姿が見えたけれど、タクシーが間一髪で走り出した。