天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
ブラッドストーンの闇と血
一日中、あたしは仕事をしながら心の中で泣き続けていた。
栄子主任や詩織ちゃんに「具合でも悪いの?」って心配されるくらい重々しい雰囲気を、無意識に撒き散らしてしまって。
なんとか頬の筋肉を動かして笑顔を作り、ふたりの心配をやり過ごすのが精いっぱいだった。
ノロノロと時間が過ぎていき、やっと今日の業務が終了してホッとする。
詩織ちゃんが「今日はデートだから」と飛んで帰って、あたしは控え室でひとり、ノタノタとメイクを直した。
こんな状況でも仮面を直すことを止められないなんて、あたしはきっと病気だ。
こうやってあたしは永遠に仮面をつけ続けるんだ。
それだけが、唯一あたしに残された、あたしができることだもの。
トボトボとひとり裏口から出て、あたしは帰路につく。
薄暗い裏路地を数歩進んだ途端、その暗がりの中から……
「聡美さん」
「わっ!?」
突然声を掛けられて、文字通り飛び上って驚いた。
そして声の主を確認して、驚きはさらに倍増する。
「あ、晃さん!?」
「聡美さん、ずっと待ってたんだ」
晃さんが、暗がりの通路のど真ん中に立っていた。
「待ってたって、あたしを!? ここでずっと!?」
「驚かせてごめん。自分でもこんなストーカーみたいな事、どうかと思ったけど。聡美さん電話に出てくれないから」
そう言って晃さんは、かなり気まずそうな表情をする。
あたしはしばらく口をパクパクさせて深呼吸して、とにかく気持ちを落ち着かせた。
ほ、本気でビックリした! オバケと遭遇したのかと思った!
あぁ、オバケじゃなくって良かっ……。
いや! 良くない!
ある意味、オバケの方がよっぽど良かったかも!
栄子主任や詩織ちゃんに「具合でも悪いの?」って心配されるくらい重々しい雰囲気を、無意識に撒き散らしてしまって。
なんとか頬の筋肉を動かして笑顔を作り、ふたりの心配をやり過ごすのが精いっぱいだった。
ノロノロと時間が過ぎていき、やっと今日の業務が終了してホッとする。
詩織ちゃんが「今日はデートだから」と飛んで帰って、あたしは控え室でひとり、ノタノタとメイクを直した。
こんな状況でも仮面を直すことを止められないなんて、あたしはきっと病気だ。
こうやってあたしは永遠に仮面をつけ続けるんだ。
それだけが、唯一あたしに残された、あたしができることだもの。
トボトボとひとり裏口から出て、あたしは帰路につく。
薄暗い裏路地を数歩進んだ途端、その暗がりの中から……
「聡美さん」
「わっ!?」
突然声を掛けられて、文字通り飛び上って驚いた。
そして声の主を確認して、驚きはさらに倍増する。
「あ、晃さん!?」
「聡美さん、ずっと待ってたんだ」
晃さんが、暗がりの通路のど真ん中に立っていた。
「待ってたって、あたしを!? ここでずっと!?」
「驚かせてごめん。自分でもこんなストーカーみたいな事、どうかと思ったけど。聡美さん電話に出てくれないから」
そう言って晃さんは、かなり気まずそうな表情をする。
あたしはしばらく口をパクパクさせて深呼吸して、とにかく気持ちを落ち着かせた。
ほ、本気でビックリした! オバケと遭遇したのかと思った!
あぁ、オバケじゃなくって良かっ……。
いや! 良くない!
ある意味、オバケの方がよっぽど良かったかも!