天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 …………。

 うん、間違いないよ。晃さんの事、好きだよ。


 あたしの目尻に涙の粒が溜まった。

 もう限界かも。流れちゃいそう。

 嫌だ。泣きたくない。メイク、崩れるから。

 そんな顔で晃さんとお別れしたくないの。


「なのに、キミの中の何かがいつも邪魔をしてる。それはいったい何なんだ? どうしてもそれが、俺には見定められない」


 あたしは力無く首を横に振る。

 言えない。それが言えるくらいなら……。


「何を恐れている? キミは怯えながら、必死に何かを自分の中に隠している」


 晃さんは覗き込むような目であたしを見ている。

 見透かされてしまいそうな、その目が怖い。どうか暴かないで。隠したいものを暴かないで。

 あたしが惨めなイミテーションであるという事実を暴かないで。


「今まで自分が望むものを、ずっと諦め続けてきたんじゃないのか? 手に入れられるはずがないと思い込んでいるんだろ?」


 思い込みじゃない。それは事実なの。

 あたしが望むものは永遠に手に入らない。偽物はどうやっても本物にはなれない。

 諦めるしかないの。


「でも本当のキミは望んでいるんだ。本当は、必死に足掻いて手に入れようと……」

「やめて!」


 あたしは涙声で叫んだ。

 やめてやめて! もうやめて!


「あたしの心を鑑定しないで!!」


 そうよ! 本当は望んでる!

 納得したふりをしてカッコつけてるだけで、本心は望んでるの!

 だから余計に自分が惨めでしかたがないのよ!


 イミテーションは本物になれない。

 絶対に不可能なのに、いつまでも未練たらしく仮面を磨き続けてる。

 さも「あたしは本物です」って顔して、薄っぺらな仮面をつけて満足してる。

 そんな惨めで情けない本心を、あなたに向かって暴露しろっていうの?
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