天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 あたしのこれまでの人生の全てを変えてくれた晃さん。

 だからあなたと一緒に、これからの人生を歩んでいきたい。

 どうかあたしをひとりにしないで。このままお別れなんて絶対に嫌。


 握りしめる手に爪が食い込み、指先が震える。

 彼を失う恐怖に震え慄きながら、それでも諦めずに全身全霊で祈り続けた。

 大丈夫だ。信じよう。

 あの時の運転手さんと、今ここで再会したことはきっと偶然じゃない。

 運命が味方してくれているんだと強く信じよう。


 あたしはまだ彼に、この気持ちを伝えていない。

 彼があたしの心をいつも読んでくれるのに甘えて、一度も自分から伝えようとはしなかった。

 今こそ、伝えるんだ。

 この口で、この声で、この言葉で、この心で。絶対に!!


 ……ところが空港に近づいたところで、突然タクシーの動きが止まってしまった。

 見ると前方に渋滞ができている。


「なに!? どうしたの!?」

「ありゃりゃ~~。こりゃあ、前の方で事故ったな?」

「ええっ!?」

「当分動きそうにないぞ」


 ザッと顔から血の気が引いた。

 そんな! あと少しで空港なのに!

 運命、あたしに味方してくれてるんじゃなかったの!?

 中途半端に味方しないでよ! やるなら最後までキチンと責任もってやってちょうだい!


「運転手さん! あたしここで降りる! ここから走るから!」


 そう叫んでお金を払おうとして、あたしは再び血の気が引いた。

 しまったあぁ! 財布持ってきてない! ロッカーのバッグの中ーー!!

 そういえば詩織ちゃんから話を聞いて、その足で飛び出してきちゃったんだ!!
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