天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 あたしはヘナヘナとその場に倒れ込んでしまった。

 もう、もう、気力も体力も、精神力も集中力も、ぜんっっぶ切れた。

 うっかりすると生命力まで途切れてしまいそう。


 本当に腕にも足にも全然力が入らなくて、晃さんが慌ててあたしを抱きかかえて運んでくれた。

 人生初のお姫様抱っこ。記念すべき第一回目だというのに。

 なんだかとことんみっともない記念になりそう。


 晃さんはあたしを空港のロビーのソファーに降ろしてくれて、事情の説明を求めた。

 あたしはグッタリ弛緩しながら、今回の顛末を逐一説明する。

 ついでに『和クン事件』の事も、包み隠さず報告した。

 晃さんは首を傾げたり、頷いたり、目を丸くしたり、顔を赤らめたりしながら聞いている。

 そして最後に片手で顔を覆って、大きな溜め息をついてしまった。


 その頃には、興奮のるつぼだったあたしの頭の中もだいぶ冷えてきて。

 結構冷静に、自分のとった行動を判断できるようになっていた。


「あのぉ、晃さん」

「ん?」

「あたし、正直な所、やり過ぎました?」

「うん。ちょっとね」

「やっぱり」


 だよねぇ。そうだよねやっぱり。

 あたしにとって和クンが嫌な人間なのは、間違いのない事実だけど。

 だからって『こんな男と別れろ!』は無いよなぁ。

 あたしのどこにそんな権利があるのよ。しかも母親の目の前で、その息子を卑下するような態度をとってしまった。


 あっちもずいぶん言いたい放題、暴言カッ飛ばしてくれたけど。

 売り言葉に買い言葉な部分も、多分に否めない。

 向こうは一般客で、こっちは新人とはいえプロなんだから、最後まで相応の対応をするべきだった。
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