天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「父親や兄が冷淡でさぁ。家族愛に飢えた、寂しい幼少期を過ごしたらしいよ?」

「…………」

「結婚してからも、子どもが次々とトラブル起こして。気苦労が絶えなかったんだって」

「…………」

「あげく脳梗塞をおこして自動車事故で急死。まだ52歳だって」

「…………」

「お姉ちゃんって、そのグレース王妃の生まれ変わりなんだぁ。ふうぅーん」


 お父さんはさっきの上機嫌が嘘のようにムッツリ黙り込んでしまった。

 お蔭で食卓は、一気に冷めた空気になってしまった。

 実はあたしとお父さんは、正直あまり仲がよろしくない。

 ていうか、ハッキリ言うと悪い。


 お父さんはお姉ちゃんを昔から溺愛している。

 男親にとって、自分の娘がこれほど美しい事がもう、自慢で、自慢で、自慢でならない。


 お父さんにとっては、最高傑作であるお姉ちゃんだけがいればいいわけで。

 あまりにも平凡なあたしの事なんて、昔から全然眼中になかった。

 ただの一度も気にかけてもらったことなんか無い。

 はっきり口に出して言われた事はさすがにないけど、親のそういう心理って、子どもは敏感に読み取ってしまうから。
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