天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「色石は、加熱処理で色を引き立たせている場合が普通だよ。ルビーとか、サファイヤとか、アクアマリンとか、トパーズとか」


 ゆ、有名どころがいっぱい出てきたな。

 そうなのか。宝石には一般的に加熱処理ってされてるものなのか。


「エメラルドの傷やヒビへの含浸処理の説明はしたよね? ヒビをそのままほったらかしにしといたら、大変だと思わない?」

「そりゃ思います。普通に」

「だから処理するんだよ。でも宝石本来の性質を変えたり損なう処置はしていないから、天然石として扱われているんだ」


 それらも天然石扱いなのか。

 でも正直なところ、話を聞いてて腑に落ちない感覚があるのはあたしだけかな?


 だって仮にも天然と銘打っている以上、どこまでもそれは自然物であるべきじゃない?

 結局は加工品でしょ? やっぱり未処理の、本当の意味での天然石の方がいい。

 そういった宝石が欲しいと考えるのが人情ってもんだと思うけど。


「聡美さん、不満そうだね?」

 晃さんがあたしの胸中を察したように笑ってる。


「いえいえ! 不満なわけじゃないんです。ただ納得できないだけです」


 思わず両手をパタパタ振って言い訳した。

 晃さんに不服そうな顔したってしょうがないじゃないの。せっかく教えてくれているのに。


「その気持ちは俺も分かるよ。ただ天然宝石ってね、自然物なんだよ」
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