天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 同じ自然物でも、野菜みたいに種をまいて収穫できるわけじゃない。

 つまり数に限りがあるわけで。

 昔は豊富な産出量を誇っていた鉱山が、現在は枯渇してしまったなんて話はざらにある。

 そんな中でさらに、まったく未処理のままで宝石として扱える原石の発見なんてごくごく僅か。


「本当に微量なんだ。だから価値が高いし価格も高い。一般人には簡単には手が出せない」


 だから、ここが思案のしどころ。

 高価で美しい未処理の天然宝石を購入するか。

 エンハンスメント処理をされた、綺麗な天然宝石を購入するか。

 未処理で見た目があまり綺麗ではなくても、天然宝石を購入するか。


「どれを選ぶかは当然個人の自由。だから俺は処理は「あり」なんだ」

「そう、なんですか……」

「大事なのは、宝石に施されている処理の事実を、購入者がきちんと理解しているかどうかってこと」


 現在は、処理は処理だということで、エンハンスもトリートメントも皆一緒に『トリートメント』と呼んでいる。

 宝石の鑑別書にも、処理の有無が記載されている。


「そういった理解のうえでの、納得の選択が重要だと俺は思う」


 晃さんの話に、それこそ納得して頷きながらもあたしは別の事を頭の隅っこで考えていた。


 しょせん、処理は処理。

 未処理のままでは、到底綺麗とは言えない天然石。
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