天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 結局そういうことよね? 天然はどこまでも天然。

 処理はどう言い換えようが処理だし、加工品はどこまでも加工品。

 そういう……ことよね。


「聡美さん、宝石ってさ」

 晃さんは整った顔立ちにハッキリとした意志の強さを漂わせながら、こう告げた。


「磨いてこそ、宝石。そう思わない?」


 ……!


『磨いてこその宝石』?


 その言葉の持つ力強さに引き込まれるあたしに、晃さんが穏やかに微笑む。


「ダイヤモンドだって研磨されてこその輝きだよ。それに目くじら立てる人なんて、いない」


 もちろん原石そのものに価値はある。

 でも『なんて美しいのだろう』と憧れるのは、やはり研磨された宝石に対して。

 人の手が、それぞれの宝石が最高に輝けるように、精一杯に心を尽くした結果に対してだ。

 それに対して、人は称賛を贈るんだ。


「それが宝石の価値のひとつであり、魅力であり、美しさであると俺は思っているんだよ」


 晃さんは、まるで宝石みたいにキラキラした目で熱心に語ってくれる。

 あたしはそんな彼を見て、自分の気持ちがフワリと軽くなっていく気がした。


 磨いてこそ宝石。最高に輝けるように、精一杯に心を尽くした結果。

 彼の言葉が、あたしの心の苦しい部分を優しく撫でてくれている。

 いままでずっと痛くてたまらなかった場所に、そっと手を差し伸べてもらえたような。

 少しだけ、救われたような気がした。
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