天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「ちなみにさっきの店で会計する時、自分も払うべきかどうすべきか、すごく葛藤してたでしょ」

「うえ!?」

「今日はお詫びのつもりで俺から誘ったんだから、どうか気にしないでね」


 バ、バレてたの!? なんで!?

 そりゃ内心は煩悶しまくりだったけど、顔にも態度にも出してない自信あるんだけど!?

 一応大人なんだし、感情を簡単に表に出さない分別くらいは身につけている。


 その辺は優良コンシーラーなみのカバー力を自負してる。なんせあたしは『鉄仮面』の女だ。

 だいたいそんなに感情が顔に出るタイプなら、今頃あたしと詩織ちゃんの関係って、かなり悪化しているはずなんだけど。


「俺、聡美さんの感情の動きが分かっちゃうんだよ。何を考えているか、なんとなく伝わってくるんだ」


 晃さんは可笑しそうにクスクス笑いながら、楽しそうにあたしを見ている。

 侮れない、この人。さすがは宝石鑑定士。

 石の内面だけじゃなく、人の内面まで見抜く観察力に長けている。ただ爽やかなイケメンってだけじゃない。


 ……なんか、嫌だ。恥ずかしい。


 じゃあもしかすると、あたしが今日ずっとソワソワ浮き浮きしていたのもバレてたんだろうか?

 男性と一緒に食事するのも初めてだって事も、薄々感づかれているのかもしれない。

 今まで男の人に、一度も相手にされなかった子なんだって思われたろうか。

 彼氏ひとりできたことのない子だって思われてしまったろうか。
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