天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 なんで素直に「嬉しい!」って言えないのかなぁ?

 そしたらあたしも素直に「おめでとう良かったね」って祝福できるのに。

 そっちの方がよっぽど人間関係円滑になると思うんだけど。


 それにしても……。


 あたしは再び心の中で大きなため息をついた。

 プリンセスなんて呼ばれるくらいだから毎年のモデルは当然、若ければ若い方が好まれるんだろう。

 魚市場の競りと一緒よ。みんな陸揚げされた魚みたいに女に新鮮さを求めるんだ。

 それはまぁ、いいんだけれど。


 今年、新しく入社した女子社員は詩織ちゃんとあたしのふたりだけ。

 つまり二者択一。そしてあたしはあっけなく落とされたわけだ。

 専務以下、全員一致の推挙か。誰一人としてあたしを推す人はいなかったってことね。


 地味に効くなぁ、この事実。腹に数発食らったジャブみたい。

 まぁ、こんな事は別にたいしたことないけどね。慣れっこだし全然平気。

 全ー然、まったく、本当に平気なんだから。大丈夫。大丈夫。


 …………。


 自分が姉みたいに絶世の美女だなんて、決して思っていない。

 他人様に夢や憧れを与えられるような、詩織ちゃんみたいな器量の持ち主だなんて思ってない。

 身の程は痛いほどわきまえている。この世に生まれた時からもうずっと。

 だからこその、この外せない鉄仮面なんだから。


 でもそのトラウマになって外せなくなってしまった鉄仮面をつけてすらの、この現状。

 晃さんと交わした会話で、こんな自分を少しでも肯定できるような気がしていたけれど。
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