天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 休憩時間になって控え室に引っ込んだ時にはもう、同情視線にさらされ続けて精神状態は疲労困憊だった。

「どうせあたしなんて」っていう最低のコンプレックスに支配されてしまっている。

 それが分かっていながら自分でもどうしようもできない。そんな感じ。


 悪いことにスマホが振動して着信を知らせた。

 こんな時に誰よ、タイミング最悪。今は誰とも話したくない気分なのに。

 イライラしながら乱暴に確認すると、それは晃さんからの着信だった。


 デイスプレイを見て、あたしは本格的に自分が落ち込んでいるのを自覚する。

 実はあの食事の日から、彼は何度かあたしに電話をくれていた。

 晃さんからの電話を受けるたびに、あたしの気持ちはボールのように軽やかに弾んでいたのに。

 今、彼からの電話を見て逆に気持ちが沈んでる。これはかなりの重症だ。

 空気の抜けたバスケットボールみたいに、気持ちが重くてたまらない。


「……はい」

『聡美さん? 晃です。今お昼休みだよね? 電話して大丈夫?』

「はい。大丈夫です」


 無視するわけにもいかずにいつも通りを装って電話に出たけど、どうにも張りの無い声しか出ない。

 鋭い晃さんがそれに気付かないわけがない。出ない方が良かったかな。


『聡美さん、なんだか元気が無いみたいだけど具合でも悪いの?』

「いえ、そんな事ないですよ。大丈夫です」

『そう? じゃあ食事に誘っても大丈夫かな?』

「……え?」

『この前の店から新メニュー開始のお知らせが届いたんだ。良かったら今度一緒にいかない?』


 晃さん、またあたしの事を誘ってくれるんだ。

 驚きと一緒に戸惑いを感じる。どうしてまたあたしを?
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