天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「まあ羨ましい。仲がよろしくていらっしゃるのですね」

 栄子主任の穏やかな笑顔につられて、ご主人も照れたように笑顔を見せた。


「銀婚式の時には、女房には何もしてやらなかったもんでねえ」

「今年こそは絶対にって、去年からずっと催促してたんですよ」


 奥様は嬉しそうにニコニコしてる。

 そんなご夫婦の前に、あたしと栄子主任は真珠の商品を並べた。

 ネックレス、ペンダント、ピアス、リング、ブローチ。お値段も種類も様々だ。


「まあ! 白や黒だけじゃなくてピンクや銀色や金色もあるのね!」

「母貝の種類によって、様々な色の真珠ができるんです」

「真珠の良し悪しってどう決めるのかしら?」


 奥様の質問に、栄子主任がよどみなく答える。


 "巻き"と呼ばれる、長い時間をかけて育てた真珠層の厚み。

 "てり"と呼ばれる、真珠層の結晶の滑らかさによるキメ細かい光沢。

 "キズ"と呼ばれる、真珠にできる窪みの少なさ。

 形は一般的には真円に近いほど良いとされている。


「つまり大きな真ん丸の、ツヤツヤしたのが良いの?」

「はい。ですがバロックパールと呼ばれる円以外の形……例えばドロップ型のようなものは価値も高いですし、窪みは本真珠の個性のようなものですから」

「色もたくさんあるしねぇ」

「コンクパールという、非常に希少な真珠もございます。表面が火焔模様なんですよ」

「まあ、そんな真珠もあるの!?」

「おいおいやめてくれ。そんな高級品、とても手が出ないぞ」

「分かってますったら」
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