天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「こんなにたくさんの種類の宝石が展示されるなんて知りませんでした」

「手ごろなアクセサリーからハイクラスジュエリーまで、幅広い内容だね」

「みんなすごく忙しそう」

「今日一日で結構な売上金額になると思う。お金って、あるところにはあるんだよなあ」

「よく言いますよね。水は上から下へ流れるけど、お金の流れはその逆だって」

「……真理だ」


 軽く笑って会場の様子を眺めると、詩織ちゃんが極上の笑顔でお客様に対応している。

 すごく大変そうだけど、それ以上にすごく幸せそう。まさに満喫中。


「詩織さん、大活躍だね。忙しそうだな」

「本人は嫌だ嫌だってずっと言ってましたけど」


 一応。口だけは。


「そう? 彼女こういうのすごく好きそうだよね? 喜んでるとばかり思ってたけど」


 …………。


「そう、見えますか?」

「うん。彼女はとても自分に自信をもっているタイプだから。ああいうの、かなり好きだと思う」


 ほぉぉ、やっぱりこの人、鋭い。

 男の人って大抵なら詩織ちゃんの事を、少女のように純真で天真爛漫な子、みたいに見る人が多いと思うけど。

 さすがは晃さん。見るトコ見てるなぁ。


「アピール力が強いなら、詩織ちゃんってこの仕事に適正ありそうですね」

「うーん、それはどうだろう。販売員向きかどうかと問われると、それは」

「え? だってアピール力が……」

「店員は商品をアピールするものだろ? 自分をアピールされてもお客は困るよ」

「あ、そっかなるほど」

「まぁ、自分自身に対する自信と同じくらい、自信をもって商品を勧められたらそれは武器だと思う」
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