天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 自信、か。

 何をするにしても自力で生きていく以上、自信というものは必要だろう。

 でも自信なんて、あたしの中のどこをどんなに覗き込んでもミジンコ一匹分も見当たらない。

 20倍鑑定ルーペどころか電子顕微鏡レベル。生物学分野よ。ナノレベルの微小さ。


 お姉ちゃんはもう領域が違いすぎて比較対象外としても、詩織ちゃんと見比べて、自分と彼女は違うんだと思い知る。

 全然違う。外見も中身も全く違いすぎる。


「チラっと見たけど、良いサファイアとルビーだったね」

「あ、はい。どちらもすごく綺麗で素敵でした」

「高価なサフィアとルビーだと聞いてたから、ひょっとしたらスター効果の見られるものかと思ったけど」


 スター効果? あぁ、スターサファイアとスタールビーね。

 光の加減で、石の表面に星のような数条の光がみられる効果。

 このスター効果が見られる宝石は珍重されてて、お値段がグーンとアップする。


「あれはね、中にルチルという針状結晶が入り込んで交差しているんだ。交差が2方向だと光りは4条。3方向だと6条の光」


 そのスター効果が見られる石は、カボションカットというツルッとした半球形にカットされる。

 そうしないとせっかくの効果が肉眼で見られなくなってしまうから。


「ところで聡美さん知ってる? サファイアとルビーの関係のこと」


 晃さんが微笑みながら、いつも宝石の事を親切に教えてくれる時の、あの穏やかで楽しそうな態度で優しく質問してきた。

 彼の様子が今までと全く変わりないことに、あたしは胸を撫で下ろす。
< 88 / 187 >

この作品をシェア

pagetop