天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「関係? 関係って、仲でも悪いんですか?」

「いや、仲は悪くないと思うよ。というよりも多分、とっても良いんじゃないかな?」


 晃さんはそう言って、ひとしきり肩を揺すって笑う。


「聡美さんて相変わらず面白いね。あのね、サファイアとルビーって実は色が違うだけの、同じ宝石なんだよ」

「へ? 同じ宝石?」


 だってサファイアはあくまでもサファイアだし、ルビーはどこまでもルビーでしょ?

 目をパチパチさせるあたしに、晃さんはまだ笑いながら説明してくれた。


 サファイアもルビーも、同じ『コランダム』という鉱物。

 このコランダムに、鉄やチタンが入り込むと青色に変化する。

 クロムが1パーセント程度入ると、赤色に変化する。


 同じ石が、青だとサファイアと呼ばれて、赤だとルビーと呼ばれる。

 それだけの違い。


 ちなみにルビーの色は、『ヒジョンブラッド(鳩の血)』と呼ばれる深い赤色が最高評価。

 これはクロムの含有率がちょうどうまく1パーセント程度含まれ、他に鉄などの不純物を含んでいない状態の石の色だ。

 クロムが少なすぎると薄いピンク色になるし、逆に多すぎると黒ずんでしまう。


「赤色以外のコランダムは、全ー部サファイアになっちゃうんだ。ピンクもひっくるめて」

「え? ピンクも? それって色の薄いルビーじゃないんですか?」

「ピンクサファイアって呼ばれてる。青色以外のサファイアは、ファンシーカラーサファイアって呼ぶんだよ」


 そのカラーバリエーションは実に豊富で。

 ピンク。紫。黄色。緑。オレンジ。無色。黒。

 ピンクがかったオレンジ色は『パパラチア』と呼ばれ、天然でこの色を持つ石は大変希少だ。

 良質なブルーサファイアよりも高額になったりする。
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