天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
心配させたくなくて、あたしは笑顔で答えた。
「大丈夫です。別に大怪我ってわけじゃないですから」
「とりあえず彼女をイスに座らせようか」
「あ、は、はい」
あたしは、女の子が大急ぎで運んできてくれたパイプイスに腰掛けた。
「聡美さん、俺フロントに湿布が無いかどうか聞いてくるから」
そう言って小走りに離れる晃さんの後ろ姿を、じっと見ていた。
彼の姿が視界から消えても、まだあたしの目と心に彼の残像が残っている。
あたしはそのまま、見えない彼を目で追っていた。
「あれ? 聡美ちゃんどうかしたの?」
背後から聞こえた声に振り向くと、相変わらずオロオロしている女の子の隣で、うちのプリンセスがキョトンとしている。
「なにかあったの?」
「ううん。ちょっと転んじゃっただけ」
「こちら、大怪我してしまったみたいで歩けないんですよ!」
「えぇ!? 歩けないの!? 大変じゃないの聡美ちゃん!」
「いや大怪我じゃないって。さすがに歩けるから。歩けなかったら、ここまで辿り着けてないって」
あたしは笑って否定したけど、詩織ちゃんは女の子の大袈裟な話を真に受けてしまったらしい。
「待ってて! あたし栄子主任呼んでくるから!」
「い、いいよそんな! 本当に大丈夫だから!」
「だめだよ! もし骨に異常があったら大変だよ! ちょっと待っててね!」
ドレスを持ち上げながら詩織ちゃんはワサワサと会場内に飛び込んで行ってしまった。
あぁ、商談中のテーブルに、あの恰好でいきなり「聡美ちゃんが大怪我した!」って乱入するのか。
あたし、思いっきり悪目立ち……。
「大丈夫です。別に大怪我ってわけじゃないですから」
「とりあえず彼女をイスに座らせようか」
「あ、は、はい」
あたしは、女の子が大急ぎで運んできてくれたパイプイスに腰掛けた。
「聡美さん、俺フロントに湿布が無いかどうか聞いてくるから」
そう言って小走りに離れる晃さんの後ろ姿を、じっと見ていた。
彼の姿が視界から消えても、まだあたしの目と心に彼の残像が残っている。
あたしはそのまま、見えない彼を目で追っていた。
「あれ? 聡美ちゃんどうかしたの?」
背後から聞こえた声に振り向くと、相変わらずオロオロしている女の子の隣で、うちのプリンセスがキョトンとしている。
「なにかあったの?」
「ううん。ちょっと転んじゃっただけ」
「こちら、大怪我してしまったみたいで歩けないんですよ!」
「えぇ!? 歩けないの!? 大変じゃないの聡美ちゃん!」
「いや大怪我じゃないって。さすがに歩けるから。歩けなかったら、ここまで辿り着けてないって」
あたしは笑って否定したけど、詩織ちゃんは女の子の大袈裟な話を真に受けてしまったらしい。
「待ってて! あたし栄子主任呼んでくるから!」
「い、いいよそんな! 本当に大丈夫だから!」
「だめだよ! もし骨に異常があったら大変だよ! ちょっと待っててね!」
ドレスを持ち上げながら詩織ちゃんはワサワサと会場内に飛び込んで行ってしまった。
あぁ、商談中のテーブルに、あの恰好でいきなり「聡美ちゃんが大怪我した!」って乱入するのか。
あたし、思いっきり悪目立ち……。