恋ごころトルク
*
今朝、アパートを出て自転車に乗る時に、バイクに見立てて、真似して乗ってみた。タンクが無いから、バイクと一緒というわけにはいかない。難しい。ブウーンなんて言ってみたりして。小学生か。楽しかったけど。
「うふふ」
「あれ、なんか真白ちゃんご機嫌ね。なにか良いことあったんでしょ」
奥さんが人差し指で突いてきた。桜井店長と奥さんは40代のご夫婦なんだけど、いつも仲良しで良いなぁと思う。奥さんも可愛らしい人だ。
「そんなことないですよ。いつも機嫌は良いんです」
「彼氏でもできたー?」
「違いますよー」
「なんだなんだー」
来ると思った。店長が混ざってきた。
「真白ちゃんが楽しそうにしてたから」
「なんだ、美味しいものでも食べたのか。俺も食べたい」
「もうあなたったら」
……なんだよ勝手にイチャイチャしといてよ……もう。
お味噌汁用のねぎを刻んで、タッパーに入れて準備をしておく。割り箸とパック、容器などの在庫はOK。あ、豚肉と玉ねぎももちろん、ぬかりなく。
今日も開店と同時にお客さんが来る。お昼に向かうにつれて、その数と回転も増えていく。「作っておいてください」も、もちろん増える。ああ、忙しいなぁ。
「こんちわ」
「あ、いらっしゃいませ」
気を抜いた時だった。光太郎さん来店。
来たり来なかったり。続けて来たり、来なくなったり。彼の気持ちで変わるんだろう。今日のご来店時間は12時半過ぎ。まぁ想定内の時間だ。なんて余裕を言ってる場合じゃない。
「豚しょうが焼き丼ですね」
「あ、あはは。今日は違うの食べてみようかなって」
な、なんですって。豚肉と玉ねぎも想いを込めて切ったのに。今日は違うの食べるですって? なんて難しい男心なの……。
「なにがおすすめですか?」
「ええと……そ、そうですね」
あたしは「おすすめは?」と聞かれた時に答えるテンプレが頭から吹っ飛んでいた。だめじゃん、仕事中なんだから。しっかりしなくちゃ。
「ナポリタン、美味しいです。あたし好きです。美味しいですよ」
美味しいを2回言ってしまった。でも大事なことなので、2回。
「あ、じゃあそれ。あと、鮭おにぎりもひとつ」
手作りのお味噌汁もおすすめしたいけど、黙っておこう。
「ナポリタン、鮭おにぎりですね。ありがとうございます」
厨房に行き、注文を伝える。サラダ用意しなくちゃ。
カウンターに戻って、お会計をする。お店の外で、掲示してあるメニューを見てる人が居る。入ってくるかな。もうちょっとゆっくりご覧になっていてくださいね。
「昨日はすみませんでした。ありがとう」
「あ、いえ。こちらこそ……」
今朝、アパートを出て自転車に乗る時に、バイクに見立てて、真似して乗ってみた。タンクが無いから、バイクと一緒というわけにはいかない。難しい。ブウーンなんて言ってみたりして。小学生か。楽しかったけど。
「うふふ」
「あれ、なんか真白ちゃんご機嫌ね。なにか良いことあったんでしょ」
奥さんが人差し指で突いてきた。桜井店長と奥さんは40代のご夫婦なんだけど、いつも仲良しで良いなぁと思う。奥さんも可愛らしい人だ。
「そんなことないですよ。いつも機嫌は良いんです」
「彼氏でもできたー?」
「違いますよー」
「なんだなんだー」
来ると思った。店長が混ざってきた。
「真白ちゃんが楽しそうにしてたから」
「なんだ、美味しいものでも食べたのか。俺も食べたい」
「もうあなたったら」
……なんだよ勝手にイチャイチャしといてよ……もう。
お味噌汁用のねぎを刻んで、タッパーに入れて準備をしておく。割り箸とパック、容器などの在庫はOK。あ、豚肉と玉ねぎももちろん、ぬかりなく。
今日も開店と同時にお客さんが来る。お昼に向かうにつれて、その数と回転も増えていく。「作っておいてください」も、もちろん増える。ああ、忙しいなぁ。
「こんちわ」
「あ、いらっしゃいませ」
気を抜いた時だった。光太郎さん来店。
来たり来なかったり。続けて来たり、来なくなったり。彼の気持ちで変わるんだろう。今日のご来店時間は12時半過ぎ。まぁ想定内の時間だ。なんて余裕を言ってる場合じゃない。
「豚しょうが焼き丼ですね」
「あ、あはは。今日は違うの食べてみようかなって」
な、なんですって。豚肉と玉ねぎも想いを込めて切ったのに。今日は違うの食べるですって? なんて難しい男心なの……。
「なにがおすすめですか?」
「ええと……そ、そうですね」
あたしは「おすすめは?」と聞かれた時に答えるテンプレが頭から吹っ飛んでいた。だめじゃん、仕事中なんだから。しっかりしなくちゃ。
「ナポリタン、美味しいです。あたし好きです。美味しいですよ」
美味しいを2回言ってしまった。でも大事なことなので、2回。
「あ、じゃあそれ。あと、鮭おにぎりもひとつ」
手作りのお味噌汁もおすすめしたいけど、黙っておこう。
「ナポリタン、鮭おにぎりですね。ありがとうございます」
厨房に行き、注文を伝える。サラダ用意しなくちゃ。
カウンターに戻って、お会計をする。お店の外で、掲示してあるメニューを見てる人が居る。入ってくるかな。もうちょっとゆっくりご覧になっていてくださいね。
「昨日はすみませんでした。ありがとう」
「あ、いえ。こちらこそ……」