恋ごころトルク

「わわわどうしよう。何か買いますから、あの、バイク」

「バイクまだ決めてないんでしょ? 良いから、せっかく知り合いになって、バイク好きになってくれたお礼です。二輪に携わるものとしてー」

 もうなんか、光太郎さんなに言ってるか分からないです。興奮してるんで、あたし。
 でもやばいよ。こんな、貰ってハイありがとうございましたって帰れるわけがない。

「他に、何か必要ですか? バイク乗るのに。というか、二輪教習で必要なもの、買うんで」

「案内に、なんて書いてありました? ちょっと見せて」

 ポケットサイズのリーフと教習手帳を光太郎さんに渡す。男らしい手だなぁ。指もなんというか、強そうというか。力仕事をしなさそうなスラリとした手よりも、男らしいこっちの手の方が断然良いな。

「ああ、普通二輪なんだね。大型かと思った。真白ちゃん背が高いし」

「一気に大型かなーとも思ったんですけど、よく分からないから、とりあえず普通二輪で良いかと思って。原付も乗ったこと無いし」

 たしか、自動車の免許を取った時、教習が雨で流れたんだった。だから、本当に乗ったことがない。

「車の免許、あるんだよね?」

「あります」

 その車も、ほぼペーパーみたいなものだけど。

「車持ってないから、ペーパーみたいなものなんです」

「オートマ限定?」

「いいえ、MTで取りました」

「へー珍しいね。若いひと達みんなAT限定で取るよね」

 ああ、友達でも居たなぁ。就職に有利だとか、そういうの無くなって来てるし、大体マニュアル車が無くなって来てるから、MT免許を取る意味が無い。更に、MT免許の方が費用がかかる。不人気になるわけだ。

「MTとAT限定なら、どっちも乗れるMTの方がお得な感じしませんか?」

「たしかに」

 ふふっと光太郎さんは笑う。

「じゃあ半クラッチの意味と感覚は分かるんだ」

「ああ、分かります」

 ああ、話脱線したね……そう言うと光太郎さんは教習手帳に目を落とす。半クラの話で続くのかと思いきや。そうだった、教習で何が必要か、買い物をしないと。

「ヘルメット、軍手……サンダルやかかとの高い履き物、厚底はダメ……まぁ当たり前か。とりあえずグローブくらいで良いんじゃない? 軍手だとちょっと心配かも」

「軍手は家にあるけど、グローブ買った方が良いんですね」

「うん。あと免許取ってバイク決まったら、ブーツとかシューズ、レインウェア、プロテクター入りのジャケットもあると良いかな」

 け、結構色々必要なのね……浅はかだな、あたしったら。
 思ったんだけど、バイクってお金持ちの乗り物なの……? 維持費もかかりそうだし。

「普通二輪だったら、400ccまで乗れるから。排気量250cc以下なら車検無いし維持費の面では良いよ。車検無いからカスタムし放題だし」

 排気量……カスタム……車検……排気量は分からないけど車検は分かるよ!

「そうなんですね、車検が無いのは良いかも」

 バイクを選ぶうえで、そういうのは大事だと思う。


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