恋ごころトルク
「あの……こんにちは」
後ろから女性の声がした。あたしかな? そっと振り向くと、小柄な女性が立っていた。可愛らしい笑顔。
「二輪、ですよね?」
遠慮がちに聞いてくる。ああ、この女の人も二輪なんだな。あまり会わない二輪教習に通う女性。
「そうです。まだまだ終わらないですけど」
頭を掻きながら、そう答えた。
「大型ですか?」
……みんな、同じことを聞くなぁ。車だったらオートマかマニュアルかってところか。
「普通二輪なんです。大型ですか?」
何度も聞かれるから、自分でも聞くようになってしまう。
「大型なんです。重くて重くて……」
「すごい! 大型かぁ。なにかバイク乗ってるんですか?」
「いいえ、持ってないです。車の免許も持ってなくて」
「ええ!」
バイクに乗ってなくて、車の免許も持ってないのに、バイクの免許を取ろうとしているなんて。凄い。アグレッシブ。格好良い。
「半クラッチとか、意味分からないですよー」
「そうですよね。あたし車はマニュアルで取ったんですけど、それでもバイクの半クラはエンストしちゃいます」
そっか。車の免許を持っていても持っていなくても、バイクはバイク。なんかね、車とは違うよやっぱり。
「重いですよね。とにかく。重さにやられてる」
ため息を付きながら言った。
「そうですよねぇ! あたしも重たくて重たくて……」
「大型って750ですよね。なんか想像できない……あたしなんか普通二輪の400であんなに手こずってるのに」
「でも、同じですからね、操作は。きっと大型すいすい取れますよ」
「そうかなぁ……アハハ」
ふたりで座って、教習のことをあれこれ喋った。みんながんばってるなぁ。その女性はマイヘルメットも持っていなくて、貸出のを使ってるらしい。