恋ごころトルク

「あの、お名前聞いても良いですか?」

 彼女は、スマホを取り出して、そう聞いてきた。連絡先交換か。

「木下真白と言います。真っ白の真白です」

「真白さん。あたし、千里です。千の里って書いて……」

 お互い、スマホで連絡先を交換した。終わったら、免許取ったら、ツーリング行きましょう。そんな約束をして。飲みに行こうね、家はどこで、仕事場は……。

 聞けば、千里さんはあたしより少し年上のお姉さん。小柄で可愛らしくて。なのに大型二輪! 格好良い。

 軽く女子会だ。こうやっておしゃべりしながら、休憩時間を過ごせると、楽しい。早めに来て準備をしているけど、1人だから、悶々と考え込んでしまって、不安と緊張で口が渇いてきてしまうんだよね。

「あたし、次の時間、乗るんです」

 そういう彼女は、立ち上がって教習の準備をする様子だ。もうそんな時間か。結構長い時間おしゃべりしていたな。

「がんばってください」

「ありがとう。真白ちゃんもね」

 手を振って、あたしは彼女と別れた。


< 55 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop