恋ごころトルク
教習2段階に入って、まとめの時期だ。お休みに2時間ずつ乗ってたら意外と消化していくのね。オーバーしてるからこれでも時間かかってる方だ。早い人は1ヶ月程で取ってしまうらしい。
最初はどうなることかと思っていたけれど、結構あっという間。もう少しで2段階見極め、そして卒検だ。クランクもヨロヨロしながらなんとか通過できるし、スラロームもコツを掴んで来た。一番苦手なのはやっぱりクランクだけど。
以前のように、重さに耐えかねてバイクを倒すことは無くなった。クランクでまだちょっと……でもそんなことを言っていられない。慣れ、だね。
自宅のトイレ、洗面台の横やキッチンに、教習コースのプリントを貼り付けてある。頭で覚えるように。1コースと2コース、2枚貼ってある。仕事中、暇な時やお昼休みなんかにも見れるように、小さくコピーして手帳に挟んである。こういうものの準備は万端。だから、前回の教習で「1人でコース走れるようになってますね。問題無いようだね」と先生に言われた。なんとか大丈夫みたい。時々、1コースと2コースがごっちゃになるけど。
今日はどんよりした天気。まさに梅雨空って感じ。洗濯物は外に干せないなぁと、朝の天気予報を見て思った。
来店するお客さんの注文をさばいて、厨房とレジを往復し、バタバタ動き回るうち、気付けばお昼過ぎ。午前中、我慢していた曇り空はついにポツポツと雨を落とし始める。
「わー降ってきたみたいですよー」
ちょうど店にお客さんが居ない。店長と奥さんに向かって、雨が降り出してきたことをお知らせした。
「激しく降ってきた?」
「いえ、ポツポツと」
「大雨にならないと良いな」
「そうよねぇ」
やだなぁ。帰りまで止まなければ、自転車を押して帰るしか無い。
口を尖らせて外を眺めていると、視界に入る背の高い真っ赤なつなぎ……光太郎さんだった。
「……いらっしゃいませ」
「……どうも」
お久しぶりですねとか、しばらく見ませんでしたねとか、言おうかと思ったけど、店に入ってくる光太郎さんを見てたら、なんだか言えなくなった。
「雨、降ってきたよ」
つなぎを少し手で払うようにしている。少し濡れたんだね。びしょ濡れになるような雨にはなっていないけれど。