恋ごころトルク
5 リフレクター
5 リフレクター
気付いたなら、合図して。
それが、ふたりの始まり。
なにがあっても、大丈夫だから。
*
少し、風邪をひいてしまったみたいだ。暖かい時期だって、濡れれば体が冷えるもの。微熱でもあるのかなぁ。ちょっと体がだるい。頭もぼーっとする。
早く帰って、眠った方が良いかもしれない。被ったヘルメットが重く感じる。
「はい木下さんね。次の時間、見極めだから、今日は不安点をやりましょうか」
「あ、じゃあコース確認と、クランクと……」
はい、仕事がお休みだからって、家で寝ているわけじゃなんです。自動車学校の予約を取っていたから、休むわけには行かなかった。
なんてことだろうね。次の時間が見極めで2段階の最後。そして見極めが終わったら卒検だというのに。雨の中、光太郎さんを見送ったのが昨日。挙げ句に風邪をひいたみたいだ。ついてない。
「俺なんか好きになったって、楽しくないぞ。一緒に居ても」
低い声でそう言った。耳に付いて離れない。
なんて、寂しいことを言うんだろう。あたしを拒絶する色を纏った声で……。思い出すと胸が痛い。
少し重い体を起こして、ああそういえば、自転車が無いんだったと思い出す。教習の前にサクラクックまでバスで行き、自転車を取って、そこから自動車学校まで来たというわけだ。体調不良なのに朝からハード。教習の前に力尽きている感じがする。
「じゃあ1コースと2コースを交互に走って、発着点に戻ってエンジン停止、降車までやってください。わたしもう1人の方を見てきますので」
前日に失恋しようが何があろうが、仕事はしなくちゃいけないし、予約していた教習も出ないといけない。待ってはくれない。大人って大変。
気付いたなら、合図して。
それが、ふたりの始まり。
なにがあっても、大丈夫だから。
*
少し、風邪をひいてしまったみたいだ。暖かい時期だって、濡れれば体が冷えるもの。微熱でもあるのかなぁ。ちょっと体がだるい。頭もぼーっとする。
早く帰って、眠った方が良いかもしれない。被ったヘルメットが重く感じる。
「はい木下さんね。次の時間、見極めだから、今日は不安点をやりましょうか」
「あ、じゃあコース確認と、クランクと……」
はい、仕事がお休みだからって、家で寝ているわけじゃなんです。自動車学校の予約を取っていたから、休むわけには行かなかった。
なんてことだろうね。次の時間が見極めで2段階の最後。そして見極めが終わったら卒検だというのに。雨の中、光太郎さんを見送ったのが昨日。挙げ句に風邪をひいたみたいだ。ついてない。
「俺なんか好きになったって、楽しくないぞ。一緒に居ても」
低い声でそう言った。耳に付いて離れない。
なんて、寂しいことを言うんだろう。あたしを拒絶する色を纏った声で……。思い出すと胸が痛い。
少し重い体を起こして、ああそういえば、自転車が無いんだったと思い出す。教習の前にサクラクックまでバスで行き、自転車を取って、そこから自動車学校まで来たというわけだ。体調不良なのに朝からハード。教習の前に力尽きている感じがする。
「じゃあ1コースと2コースを交互に走って、発着点に戻ってエンジン停止、降車までやってください。わたしもう1人の方を見てきますので」
前日に失恋しようが何があろうが、仕事はしなくちゃいけないし、予約していた教習も出ないといけない。待ってはくれない。大人って大変。