桃から生まれなかった桃太郎
ジより少し遅れて、太郎はまた川上へ歩き始めました。

キジの言うとおり、太郎は母に会った後のことを考えていませんでした。

考えていたのは、母に会うということだけでした。

母に会いさえすれば、何かが変わると思うだけでした。

おじいさんとおばあさんにいつも聞かされていた、優しくて美しい母を太郎は見つけることができるか、それすら不安になりました。

また、母は大きくなった自分を見てどう思うだろうか。

小さな赤ん坊だった自分を、本当に自分の子だと認めてくれるのだろうか。

太郎は母に会うことが、急に恐ろしくなりました。
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