桃から生まれなかった桃太郎
「かあさん…」

太郎は心の中で叫びました。

毎日おじいさんやおばあさんから言い聞かされ、思い描いていた姿よりは、日に焼け、しわの多い顔でした。

女は、薄汚い獣の皮を身にまとい、はだしで、髪の毛を梳いたあともありませんでした。

しかし、何よりもその、小さく閉じられたくちびるはおじいさんにそっくりで、

墨のように黒い瞳と髪の毛は、おばあさんにそっくりでした。
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