桃から生まれなかった桃太郎
たえと鬼
【1】
たえの心臓は、早鐘のように鳴っていました。
川下の村で、十五のときに鬼にさらわれた娘。
それは自分のことだろうか。
たえは、十七年前のことを思い出していました。
あの日男と、心も体も重ねあわせひとつになって、幸せに思いました。
あのとき、たえには、何も怖いものはありませんでした。
だだ、この強い男に、ずっと抱かれていたいと思うだけでした。
たえは、誘われるがままに、男についていくことを決めました。
男とともに新しい土地で暮らすことの困難さを、想像もせずに。
川下の村で、十五のときに鬼にさらわれた娘。
それは自分のことだろうか。
たえは、十七年前のことを思い出していました。
あの日男と、心も体も重ねあわせひとつになって、幸せに思いました。
あのとき、たえには、何も怖いものはありませんでした。
だだ、この強い男に、ずっと抱かれていたいと思うだけでした。
たえは、誘われるがままに、男についていくことを決めました。
男とともに新しい土地で暮らすことの困難さを、想像もせずに。