桃から生まれなかった桃太郎
男とたえは、川上を何日も上り、桃の咲くこの地に着きました。

桃の花がこぼれ落ちるように咲くこの村は、鬼の住処とはまるで似つかわしくない、美しいところでした。

「わたし、あなたの名前をきいていなかったわ」

たえは、男に言いました。

「ああ、そうだったかもしれないな」

男は、笑いました。

「おれは、モリトという名だよ」

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