桃から生まれなかった桃太郎
たえと太郎
【1】
あれから十五年の月日が流れました。
たえは、突然やってきて
「さらわれた娘を探しにきた」
と言った若い男が誰であるか、すぐにわかりました。
墨で描いたような、つややかな瞳と髪の毛は、自分によく似ていました。
力強い眉と浅黒い肌の色は、夫によく似ていました。
15のときに村でさらわれた娘は、自分のことにちがいない。
その娘を探しているあの若い男は、川に流した自分の子にちがいない。
しかし、なぜあの子は、私を探している?
私が母だということを知るはずがないのに。
たえは、突然やってきて
「さらわれた娘を探しにきた」
と言った若い男が誰であるか、すぐにわかりました。
墨で描いたような、つややかな瞳と髪の毛は、自分によく似ていました。
力強い眉と浅黒い肌の色は、夫によく似ていました。
15のときに村でさらわれた娘は、自分のことにちがいない。
その娘を探しているあの若い男は、川に流した自分の子にちがいない。
しかし、なぜあの子は、私を探している?
私が母だということを知るはずがないのに。