桃から生まれなかった桃太郎
「やめるんじゃ」

太郎はかすれた声で叫びました。

モリトの大きな腕は太郎の背中で交差し、体を包み込みました。

太郎は、ぎゅっと強く優しく抱きしめられたのでした。


太郎は驚きました。

肉と酒のにおいがしました。

胸板は厚く、力強く、そしてあたたかい。

なぜか、切ないような、恥ずかしいような気持ちがこみ上げてきました。
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