桃から生まれなかった桃太郎
「育てたかった。私たちのこの手で。

しかし、この地の掟だった。

おまえの瞳や髪はわたしによく似て、黒くつややかだった。

それを皆が畏れた。

父は、わたしとおまえと3人で、

この地を離れて暮そうと言ってくれた。


しかし、わたしはこの地を離れて生きていけるとは思えなかった。

だから、言い伝えどおり、おまえを川に流すことにした。

そうするより生きる方法はなかった。
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