桃から生まれなかった桃太郎
たえの体は、まだ震えていました。

男は、力をこめて肩を抱きました。

細い肩が、男の胸に突き刺さりそうでした。

たえは泣いていました。

男は、流れ出る涙を、その手でぬぐい、小さな唇に触れました。

たえの小さな唇はかすかに動き、言葉をつむぎました。

「すきです」
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