桃から生まれなかった桃太郎
男は、その言葉を、耳でなく、唇でうけとりました。

たえの唇からつむぎだす、

言葉にならない気持ちは、

男の唇から胸に流れていくようでした。


「たえ、おれも、おまえがすきだ」

男はそういって、たえの首筋を唇でなで、

鼓動が透けて見えるほど高鳴る、

たえの小さな胸に手をやりました。


たえは、何も言いませんでした。

その手や体を、ちいさな体でうけとめようとしました。



2人は、心と体を通わせました。
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