図書館からはじまる



「出ようか?」


「はい」


そういうと、太田さんは出て行こうとした。


「あ、太田さんは‘おあいそ’はここを押してからレジに行くんです」


「あ、ごめん」


「やっぱり…初めてじゃ?」


太田さんは、顔を真っ赤にして頭をかいた。


その仕草が可愛くて、愛おしく思えた。


「弱みを握られたな…」


「握っちゃいました」


廻る寿司の仕組みに驚いていた太田さんをフォローした。


私が支払いをしようとしたら、「初めてなんだから俺に払わせて」と言って結局支払いを済ませてくれた。


「家まで送るよ」


「近くまででいいですよ」


「送らせて下さい」


「そこまで言ってくれるならお願いします」


ここから歩いて帰ると20分ぐらいらかかる。


20分間一緒にいれる…


けど、なんだか緊張して何にも話せない。


お寿司食べながら話できてたのに…


そんなことを考えてたら、ちょっとした段差につまづいて転けそうになった。


すると…


「どこ見てんの?」


と、左手を掴まれた。


「これで、転けないだろ?」


え?


手繋いでくれるの?


あまりにも急なことだったので、声も出なかった。


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