図書館からはじまる



「出ようか?」


「はい」


のっぽさんに誘われたけど、奢らせるわけにはいかないから先に立ち上がったが…



「あ、太田さん‘おあいそ’はここを押してからレジに行くんです」


「あ、ごめん」


「やっぱり…初めてじゃ?」


確かに、そんなに来たことがなかった廻る寿司…


味はまあまあだったが、廻っている内容が楽しかった。


それにしても、この場で皿の数を数えるのか…なるほど。


かなり恥ずかしく、自分でも顔が赤くなっているのがわかる。


「弱みを握られたな…」


「握っちゃいました」


と言ったのっぽさんの笑顔がすごく可愛かった。


のっぽさんが支払いをしようとしたが、もちろん俺が支払った。


「家まで送るよ」


「近くまででいいですよ」


「送らせて下さい」


「そこまで言ってくれるならお願いします」


まだ、もう少し一緒にいられるな。


寿司食べながら話できてたのに、意識しすぎてか、なかなか話ができない。


少し歩いたら、のっぽさんが段差につまづいて転けそうになった。



「どこ見てんの?」


と、俺は咄嗟にのっぽさんの左手を掴んだ。


「これで、転けないだろ?」


のっぽさんは、驚いた顔をしていた。


少し距離が縮まった気がした。



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