図書館からはじまる
〜6〜



★ ★ ★


時刻は、17時半になろうとしていた。


俺は、宝のうさぎの人形を探しに図書館に向かっている。


駅を超えて、しばらくすると前から自転車に乗っている女性に声を掛けられた。


「太田さん…」


「あっ、のっぽさん…」


「どうされたんですか?」


「忘れ物を…」


「あっ、うさぎのお人形?」


「そう!」


「ありましたよ。宝ちゃんのですよね」


「そうなんだ。宝、あれがないって大泣きして…」


「私、取ってきますね」


「あ、申し訳ない…帰るんじゃ?」


「大丈夫ですよ。じゃ、行ってきます」


のっぽさんは、帰る途中だったのに、わざわざ図書館まで、人形を取りに行ってくれた。


のっぽさんは、すぐに戻って来て、お礼を言った。


でも、いつ落っこちたのか気になっているとのっぽさんが「たぶん、宝ちゃんが眠ってしまって、おんぶしている時じゃないですか?」と言ってくれた。


本当に気付かなかったな…けど、人形が見つかって本当に良かった…これで、宝も喜ぶな。


「じゃあ、私これで失礼しますね」


「何か用事でも?」


「は、はい…」


のっぽさんは、俺から目を逸らし、真っ赤な顔になった。


「男?デート?」


「いや…あの〜」


「あっ、もしかして、この前の合コンの?」


「合コンじゃないです。婚活パ…あっ…」


婚活?のっぽさんは、結婚に焦ってるのか?


「え?あれ、婚活パーティーだったんだ」


「いや、その、あの、えーと…」


「その時の男だ」


「もう!あなたは、いつも無神経過ぎます!ほっておいてください!」


あ〜あ…


やってしまった…


何も言えないまま、のっぽさんは自転車に乗って、駅の方へ向かって行った。


また、のっぽさんを怒らせてしまった。


俺は、何をやってるんだ?


情けない…


ん?


なんで、こんなこと思うんだ?


ちょっとだけ、胸の奥がチクチクしてるぞ…



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