図書館からはじまる
BARでは、静かな雰囲気でジャズが流れていた。
カウンター席に座り、ウイスキーとカクテルを頼んだ。
私は、太田さんが言った言葉が気になっていた。
薗田さんは、BARのマスターと仲がいいらしく、会話が弾んでいる。
その会話が終わったらしく、体を左側に座っている私の方に向けた。
「ごめんね。久しぶりにここに来たから、話が弾んでしまった」
「いいえ」
その後薗田さんは、色んな話をしてくれたが、今まで、家族の話は聞いたことがなかった。
7歳の時から母一人、子一人で暮らしてきたようで、お母さんにはとても苦労をかけたらしく、仕事は常に掛け持ちで、小さい頃から一人で家にいることが多かったらしい。
そんなお母さんには、大学まで行かせてもらったとのこと。
そして、薗田さんはゆっくりと話出した。
「実は、母が乳がんで入院していているんだ」
「そうなんですか?」
「母は、何故か保険に入っていなかったんだ…だから、膨大な治療費がかかってしまう…50万円ほどすぐに貸してもらえるところってないかな?」
「え?」
「明後日までに払わないといけなくて…」
そんな大変なことを聞いてしまったら、私の貯金から出せるし、明日は、土曜だけどATMで出せばなんとかなるし…
「た、大変ですね…わ、私のでよかったら…あ、明日には用意できると思います」
「本当に?明日、何時ぐらいかな?朝10時にはいけると思います」
「そっか…間に合うよ!ありがとう!瞳子さん!」
「いいえ、お力になれれば…」
今日は、薗田さんとは現地で別れた。
もう少し、BARで飲みたいとのことだった。