図書館からはじまる



それから、二週間図書館に通うが、相変わらずのっぽさんは隠れてしまう。


今日は、保の親父の誕生日会があり、それに参加しなければいけない。


毎年恒例で、有名ホテルの一室を貸し切っての誕生日会。


保の親父にはお世話になっていて、毎年呼ばれている。


最寄り駅で降りた時に、保の二つ下の妹と出会した。


「おお、あゆみ!久々だな」


「宗輔さん!本当に久しぶり!」


あゆみは、俺の腕を組んで歩き出した。


「パパのお誕生日会行くんでしょ?一緒に行こう」


「ああ」


しばらく歩くと偶然、前からのっぽさんが男と歩いて来た。


ん?


あの男…


奈月の詐欺のやつじゃないか?


「のっ…瞳子…」


俺は、思わず「のっぽさん」と言いかけたが、「瞳子」と呼び変えた。


「…」


すれ違った時に、あゆみから離れ、のっぽさんの手首を掴んだ。


「離してください」


さらに強く掴んだ。


「ちょっと、あんた何やってんだよ!離せよ」


「俺は、瞳子に話があるんだよ!」


「俺の女に触れるな!」


は?この詐欺師!男を睨みつけた。


俺は、掴んでいたのっぽさんの手首を引き寄せて、耳元でこう言った…


「そいつに気をつけろ」


それだけ言って、俺は、あゆみとその場を去った。


「誰?」


あゆみは、近づきまた、腕を組んできた。


「知り合い…」


のっぽさん大丈夫かな?


誕生日会中ものっぽさんのことが気になって仕方がなかった。


保にもそのことを話した。


俺は、それからも図書館に通うが、やっぱり避けられる。


違う曜日にも行ってみるが、避けられて、会えない。



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