紳士な課長、愛をささやく
「お疲れさまです。なにか探し物ですか?」
「まぁ、探し物と言ったら探し物だけど。園川に聞いたら蓮見は資料室だと言ってたから」
「え、私ですか?」
片倉課長が私を探していたなんて思わなくて、なにかやらかしてしまったんだろうかと不安が頭を過る。
「あの、なんでしょうか?」
「頼んでいた見積りはどうなったかと思って」
「あっ、見積りは出来てUSBに保存してます。片倉課長はまだ営業先から戻ってこられてなかったので頼まれたファイルの整理を優先させてしまいました。すみません」
「いや、責めている訳じゃないから謝らなくていい。それに、そのファイルは園川が使ったものだろ。自分が使ったものは自分で片付ければいいのにな」
そう言って、片倉課長はテーブルの置いていたファイルを手に持つと棚に直し始めた。
えぇー、一体なにをされてるんですか!
「か、片倉課長!片付けなら私がします」
慌てて駆け寄り止めに入った。
課長にこんな雑用をやってもらうなんて申し訳ないの一言に尽きる。
それなのに課長は気にする様子もなく、次々とファイルを片付けていく。
「二人でやった方が早く済むだろ。ホラ、蓮見もさっさと手を動かす」
「は、はいっ」
そんなこと言われたら、素直に従うしかない。