紳士な課長、愛をささやく
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「へぇ、片倉課長がね」
同期の山村香苗がカレーを食べながら感心したように言う。
昼休み、社員食堂で待ち合わせをしランチを食べていた。
香苗はうちの会社の受付をしている。
見た目も可愛くて、小柄な小動物系だから男の人が守ってあげたくなるオーラを放っている。
おまけに性格もよくて料理上手、そんな香苗がモテないわけがない。
うちの男性社員や他の会社の人に何度も告白されたり、食事に誘われたりしているけどすべて断っている。
それは香苗に年下の彼氏がいるからだ。
香苗には私が片倉課長に想いを寄せていることを話していた。
さっきの資料室での出来事が嬉しくて香苗に聞いてもらったところだ。
「片付けを手伝ってくれるなんて思ってもいなかったから驚いたんだけど、嬉しかったなぁ」
むふふ、とつい思い出し笑いをしてしまう。
ファイルの片付けが終わると、片倉課長と一緒に営業のフロアに戻った。
たいした話は出来なくても二人きりの時間があったことだけで私にとっては幸せだった。
「陽菜子、顔が気持ち悪いことになってるよ」
「ちょっと!気持ち悪いって失礼なんだけど」
「だって、ホントのことだし。陽菜子、ニヤニヤして顔がだらしないことになってたもん」
香苗は可愛い顔をしてよく毒を吐く。
三年の付き合いでもう慣れたけど。