紳士な課長、愛をささやく

「陽菜っちにかなっぺ、俺も仲間にいーれーてー」

騒がしい男がやって来て、私と香苗は顔を見合わせてため息をつく。
二十五歳にもなって「いーれーてー」って……幼稚園児じゃないんだから。

豚カツ定食をのせたトレイをテーブルに置き、私の隣に座ってきた。

「相変わらず大和はうるさい。うるさいのはその身長だけにしてよ」

うんざりしたように香苗が毒を吐く。

「身長がうるさいってなんだよー!俺は名前呼んだだけなのに。それに明るいの間違いだろ。あ、いただきまーす」

手を合わせ、箸で豚カツを掴み口に入れるのは浪川大和。
私と香苗の同期で食品流通部で働いている。

真っ黒な短髪にクッキリとした二重。
顔が童顔でよく学生に間違えられるとボヤいている。
学生時代はバレー部にいたらしく、百八十五センチの長身だ。
私とは二十センチぐらいの差がある。
香苗とは三十センチ以上も差があり、立って話したら首が疲れると愚痴ってた。

入社後の研修で同じグループになってから仲良く?なった。
人懐こい性格で、自己紹介したあと勝手に変なあだ名をつけて呼んできた。

私はまだいいけど、香苗なんて“かなっぺ”だからね。
香苗は“田舎っぺ”みたいで嫌だと言ってたけど今はもう諦めている。

半年に一度のペースで同期会をしていて、いつも大和が幹事をしてくれている。
大和は賑やかで楽しいことが大好きみたいだ。
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