紳士な課長、愛をささやく
「騒がしいと思ったらやっぱり大和たちか」
呆れたような声が聞こえる。
「なんだ、雅史かよ。かなっぺの隣が空いてるから座れよ」
大和は声の主に座るように促す。
香苗の隣に座ったのは原田雅史。
食品部門の営業部で働いている。
ブラウンの髪の毛をワックスで纏め、目鼻立ちがハッキリしているイケメンだ。
原田くんは笑顔が爽やかなジャニーズフェイス。
大和が“動”なら原田くんは“静”だ。
騒ぐ大和を原田くんが抑える感じで、二人はバランスがいいと思う。
そんなことより、聞き捨てならない言葉を耳にした私は思わず抗議の声をあげた。
「ちょっと原田くん!大和“たち”って一緒にするのやめてよ。騒がしいのは大和だけなんだから」
うるさい大和と同じ括りにされるなんて絶対に嫌だ。
「なんだよ、陽菜っち。俺だけ騒がしいとかひどくねぇ?」
「ひどくないよ。ホントにうるさいじゃん。それに、大和は背も大きいし声もデカイから余計に目立つんだよ。いつも私らは巻き込まれて“うるさい軍団”と思われて迷惑してるんだから。ね、香苗」
同意を求めると香苗はうんうんと何度も頷く。
「大和と陽菜子はいいコンビだね。いつ見ても飽きないよ」
「マジでやめて。コンビとか私らお笑い芸人じゃないんだから」
穏やかな笑みを浮かべる原田くんに鼻息荒く文句を言った。