秘密が始まっちゃいました。
私は何事もなかったように、身体を起こした。
あくまで『同僚の冗談をいなした私』を装いつつ答える。


「そのために、特訓してるんじゃないですか」


効果があるかわかんないけど。


荒神さんははぁーっとため息をついて、DVDのリモコンを手にした。
すでに再生中の映画を巻き戻すためだ。


私はソファに座り直し、バレないように深呼吸した。


落ち着け、落ち着け。

心臓よ、落ち着け。


『真っ赤な目じゃドキドキしない』?


ああ、神様。
私、嘘つきました。

ホントはめっちゃくちゃドキドキしました。

ただでさえ、イケメンなのに!
ただでさえ、フェロモン駄々漏れなのに!

押し倒されて、強引に迫られて、

ドキドキしないわけなかろーが!!

そこまで枯れてないわよ、29歳女子は!!

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