秘密が始まっちゃいました。
私は馴れたもんで、彼の手を引き、階段に向かう。
エレベーターを使うより、ゆっくり階段を降りて行った方が、荒神さんを落ち着かせられる。
もう、何度目だかわからない。
こんなラスト。

後ろ姿だけなら、手を繋いで階段を降りるカップルに見えるかもしれないけれど。


結論から言おう。

『悲しい映画は荒神さんの涙克服の役にたたない!』

何本映画を見ても、荒神さんは滝のように泣いちゃうもん。
馴れるというより、親しんでる気がする。

はー、作戦失敗だね。こりゃ。


「望月、待ってくれって言ってるだろ!?もう一回顔を拭かせてくれ」


階段を降りながら、鼻声で荒神さんが訴える。
私は彼の顔を見上げる。涙でぐしゃぐしゃの顔だ。
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