秘密が始まっちゃいました。
私はそのまま、二歩階段を降り、無人の踊り場で荒神さんと向かい合う。

荒神さんはポケットからティッシュを取りだし、びーんと鼻をかんだ。
そして、すでに涙でびっしょりのハンカチも引っ張り出すので、私はその手を制した。

このために持ってきてあるタオルハンカチで、荒神さんの頬と目元をポンポンと押さえる。
彼は背が高いので、高めのヒールをはいても、見上げなければならない。


「あじがど、望月」


すんごい鼻声で荒神さんが言った。
泣き腫らして顔中赤い。

でも、カッコ悪くない。
単純に彼の泣き顔はセクシーだ。
贔屓目ではない。

そして、これは私だけかもしれないけど、荒神さんの泣き顔を観てると、無性に抱き締めたくなる。
ぎゅっと頭を引き寄せて、「泣いてもいいよ」なんて言いたくなる。

当然、そんなことできないので、私は心に沸き上がる疼きを抑え、彼の涙を拭くのだ。

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