秘密が始まっちゃいました。
私は涙腺強化が失敗すると早めに悟っていたので、次の作戦を仕込んでおいた。


「いいですね?荒神さんは『花粉症』です」


私が言うと、彼は常備している伊達メガネをスチャッとかけた。


「了解。涙も鼻水も出まくっちゃう秋の花粉症だ、俺は」


自分に言い聞かせるように言う。

私はかれこれ3週間、ことあるごとに荒神さんに伊達メガネとマスクを着用するよう指令してきた。
主にオフィスでの話だ。


「万が一、結婚式で涙が出ちゃったとしても、日頃から『花粉がつらいんだ』なんて言っておけば、ごまかしやすいと思いません?」


「うんうん、現実的な提案だよ。日冴ちゃん偉い!」


マスクも着用して見せた荒神さんが、馴れ馴れしく私を誉める。
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