秘密が始まっちゃいました。
荒神さんはマスクもメガネも装着済みだ。
しかし、その目からは大粒の涙がこぼれている。

幸い会場は暗く、新郎新婦とご両親にスポットライトが当たっているため、誰もまだ気付いていない。


「おとうさんとおかあさんの元から巣立つのは……すごくすごく寂しいです……」


泣き崩れそうな瑠璃。
それを支える福谷。
涙を拭うお母さん、右手で顔を覆い天を仰ぐお父さん。
……そして、滝の涙を流す荒神さん。

その涙、瑠璃の親族レベルです。


ともかく、会場が明るくなったら、確実にバレる。
明るくなるタイミングは新郎の挨拶のはずだ。

荒神さんを逃がすなら、今この時をおいてない。


「おとうさんとおかあさんみたいな幸せな家庭を……私も……健さんと作っていきたいです……。愛して育ててくれて、ありがとうございました！」


頭を下げながら瑠璃が嗚咽し、福谷が瑠璃の肩を抱いた。
会場に感動が満ちる。

すすり泣きがそこかしこから聞こえる。
もらい泣きするのは決まって女子。


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