秘密が始まっちゃいました。
シークレットデート
①
それから1週間、私と荒神さんは顔を合わせなかった。
荒神さんが奈良のメーカー工場で商品研修が入り、月曜から留守にしていたためだ。
荒神さんがいないだけで、私の苦労はぐっと減った。
申請書類の出し忘れはなく、社内メール便も紛失せず、会議室は順序よく使われ、誰も総務に苦情を寄せてこなかった。
荒神さんがいるといないで、全然違う。
普段は問題児の集まりである一販課は、ひとりの首謀者が欠けただけで、すっかり静か。
ほらぁ、やっぱり元凶はあの人じゃん。
なんて、思いながら、どことなく物足りない日々を過ごしたのも事実だ。
荒神さんがいないと平和過ぎる。逆に言えば、いつからか私は荒神さんに振り回されるのが日常になっていたのだ。
さらに、この1ヶ月はプライベートでも振り回されてきたんだった。